人間関係

言葉を切り取って、部分を全体かのように話す人の心理とは?

言葉を切り取って、部分を全体かのように話す人の心理とは?

SNSやニュースを見ていると、「あの人はこう言った!」と発言の一部だけを取り上げて、騒ぎになる場面をよく見かけませんか?
「いや、そういう意味じゃないのに……」と思うこともあるでしょう。でも、なぜ人は言葉を切り取って解釈したがるのでしょうか?

今日は、その心理を深掘りしてみましょう。


1. 自分の意見を正当化したい(不条理な信念と防衛機制)

人は誰しも、自分の考えを「正しい」と思いたいものです。
だからこそ、自分の主張に都合のいい部分だけをピックアップし、「ほら、これが証拠だ!」と言いたくなるのです。

これは心理学でいう「不条理な信念(スキーマー)」に深く関係しています。
たとえば、「世の中は白か黒かしかない」という極端な考えを持っている人は、相手の発言を部分的に取り出し、自分の価値観に当てはめようとします。

また、防衛機制の一つである「合理化」も影響します。
たとえば、自分の意見を正当化するために、相手の言葉の一部を切り取って解釈することで、自分の立場を守ろうとするのです。

【具体例】

Aさんは会社の新しい制度に反対しています。
しかし、上司が「この制度にはメリットもあるし、調整も可能だ」と発言しました。
するとAさんは「ほら、上司も『この制度にはメリットがある』って言ってるから、変更されることはない」と決めつけ、反対の声を無視してしまいます。


2. 認知バイアス(確証バイアス)と承認欲求

人は、自分が信じたいものを信じる傾向があります。これを「確証バイアス」と言います。

たとえば、「〇〇は危険だ」と信じている人は、それを裏付ける情報ばかりを探し、逆に「〇〇は安全だ」という証拠は無視してしまいます。

こういう人が発言を切り取ると、

  • 「やっぱり〇〇は危険だった!」
  • 「ほら、この専門家も言っている!」

と、自分の信じる方向に話を持っていきがちなのです。

さらに、ここには「承認欲求」も関係しています。
SNSでの「いいね」やフォロワーの増加を求めるあまり、炎上するような情報をあえて切り取って拡散するケースもあります。

【具体例】

Bさんは、ある健康法を強く信じています。
ある医者が「この健康法にはメリットもデメリットもある」と話したのを聞いたBさんは、「医者も『メリットがある』と言っていた!」と都合よく解釈し、自分の考えを補強する材料にしました。


3. 議論で優位に立ちたい(自己呈示と防衛機制)

議論や口論の場面では、「相手の弱点を突く」ことが重要になります。
そのため、相手の言葉の一部を切り取り、都合よく利用する人もいます。

これは、心理学でいう「自己呈示(セルフ・プレゼンテーション)」の一種です。
自分を知的で論理的に見せたい人ほど、相手の発言を切り取り、「自分のほうが正しい」と証明しようとします。

また、防衛機制の「投影」も関係しています。
本当は自分の考えに不安があるのに、それを認めたくないがために、相手の言葉を都合よくねじ曲げてしまうのです。

【具体例】

Cさんは、オンライン討論会で「〇〇の政策は問題があるが、一部改善すべき点もある」と発言しました。
しかし、対立する相手は「Cさんは『〇〇の政策は問題だ』と言った!」と切り取り、論破しようとしました。


4. 感情が先走る(不条理な信念と防衛機制)

人は、感情が動かされると冷静な判断ができなくなります。

例えば、ある有名人が「〇〇の人たちの中には、問題行動をする人もいる」と言ったとしましょう。
でも、一部の人は「〇〇の人たちは問題行動をする」と誤解してしまうことがあります。そして、怒りにまかせて批判を始めてしまうのです。

これは、「不条理な信念(スキーマー)」の影響です。
「世の中は敵と味方に分かれるべき」という極端な考え方を持つ人は、発言の一部を切り取ることで、自分の世界観を保とうとします。

また、防衛機制の「抑圧」によって、自分の不安や疑念を直視せず、相手を攻撃することで心理的安定を保とうとすることもあります。

【具体例】

Dさんは、好きな映画が批判されるのが許せません。
映画評論家が「この映画にはいい点もあるが、改善すべき部分もある」と発言すると、Dさんは「この評論家は映画を貶している!」と激怒し、SNSで批判を始めました。


まとめ:言葉を切り取る心理には深い理由がある

✅ 不条理な信念(スキーマー)が影響し、極端な解釈をする
✅ 防衛機制(合理化・投影・抑圧)によって、自分の立場を守ろうとする
自己呈示の一環として、自分を正しく見せようとする
承認欲求を満たすために、情報を操作する
確証バイアスにより、自分の信じる方向に情報を歪める

情報があふれる時代だからこそ、冷静な判断が求められます。
次に誰かの発言が切り取られているのを見たら、一度立ち止まって考えてみましょう。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

Be rebornラボ

投稿者の記事一覧

合同会社 実践マーケティングセンターの村田敦(むらたつとむ)です。
私のプロフィールなどについては、下記WEBページにてご覧いただけます。

希望を見出すことの大事さ・難しさ

「防衛機制」──無意識が仕掛ける心のバリアとは?

無料講座・出来てるつもりの傾聴から抜け出す最短ステップ

関連記事

  1. 燃え尽き症候群が周囲に与える影響
  2. 燃え尽き症候群が注目されるようになった背景
  3. 思い込みを手放すとは…

時間は生命

ライフ

人間関係

新着ニュースレター(無料)

人気記事

おすすめ記事

「Be reborn」とは 希望を見出すためのシンプルな7つのヒント 自分の時間を大切にする方法

ピックアップ記事

  1. 活動者にとっての「Why(なぜ?)」って?
  2. 燃え尽き症候群が周囲に与える影響
  3. 「Be reborn」とは
  4. 燃え尽き症候群が注目されるようになった背景
  5. 人生に疲れたなら休息を
  6. 自分自身と向き合うことの大事
  7. 自分の時間を大切にする方法
  8. 言葉を切り取って、部分を全体かのように話す人の心理とは?
  9. 希望を見出すことの大事さ・難しさ
  10. ネガティブな感情を肯定して自分らしく

PAGE TOP